22
「あんたの兄さんは、何処に囚われているんだ? 」
オレは、尋ねた。
「神殿の地下にあると聞く。俺は、行ったことはないが 」
テシウスが答えた。……牢屋なんてあったのか。オレは知らなかった……。
「オレだって、あそこには居たが、牢屋なんて見たことねえよ 」
「あんた……あそこに居たのか? 」
「あんたの兄貴と同じようにな。……オレの場合、牢屋ではない部屋で、 鍵かけられて閉じ込められて……そこでいろいろ仕込まれていた。最悪だったぜ 」
テシウスは変な顔をしている。
「あんたは……神殿の奴らの……仲間じゃないのか? 」
おいおい、一緒にすんなよ。あの胡散臭い奴らの仲間だって?
「冗談じゃねえ。あそこには、オレの知り合いはいねえよ 」
「……」
テシウスはますます顔を歪ませた。
「兄は……俺のためにお金が欲しかったのです。俺のスキルをあげる為に…… 」
バードランドが、彼に暖かい飲み物を用意してくれた。
「俺たちには親が居りません。今まで、ずっと二人きりで暮らしてきましたから 」
彼は、バードランドに自分達のことを話し始めた。オレとジョイは、傍らで黙って様子を見ていた。
「神殿には、選ばれた者たちが、それぞれ優遇されて暮らしていると聞きましたので、兄は迷わず、志願いたしましたが……残念ながら選抜されずに戻ってきていたのです 」
「……で、なぜ、こんなことに? 」
「神殿の内部に『指導者を騙る』者が入り込んだので、人知れず処分して欲しいと……神殿の選抜隊の上官だったと思います 」
……だから、オレは騙ってねーっうの。
テシウスの話を聞きながら、オレはムカムカしていた。
「彼を『神の水』に投げ込んだまではいいが……そのあと、彼を逃がした犯人として、兄は捕らえられてしまったのです。
……全ては、神殿の選抜隊が仕組んだことだった 」
「……で、結局オレが奴らとグルになってあんたの兄貴を嵌めたってか? 」
「…… 」
「あいつらは、あいつらで、オレがあんたの兄と共謀していると思ったようだな。オレを逃がした……と 」
「……実は、バール様が隠されていたとも知らずにね 」
バードランドも理解したようだった。
「なんてこった 」
オレは、開いた口がふさがらなかった。
「やれやれ、結局また振り出しに戻るのかよ。まいったぜ 」
オレは、のろのろ立ち上がった。
「あんたの兄貴を助け出さないと、オレはどうしても現界に戻れないんだろ?……なんだよー、せっかく出てきたのにさー 」
バードランドは、オレがこうすると、分かっていたようだった。
「覚悟されるのですね? 」
「うん。一か八かの賭けだな。もし、これで出てこれなくなったときは、仕方ねえ……従うしかないか 」
テシウスが心配そうにこちらを見ている。
「あのーー随分、聞かされた話の方と違うようです。貴方は 」
「人の噂って、当てにならないことが多いぜ。オレはどうやらあんたたちのいう『指導者』には向いてねえらしいがな 」
「にぃちゃん……」
ジョイも心配そうに、寄ってきた。
「大丈夫。なんだかオレにもよくわかんねえけれど……あいつらには負ける気がしねえ 」
根拠はないが、なぜかそう感じる。
「テシウス……といったな 」
「…… 」
「いいか、男の約束だぞ。オレがあんたの兄貴を助けたときはーー次はオレを必ず現界に送ってくれ 」
「ええ…… 」
ヤツは……静かにうなづいたのだった。
オレは、どこまでついてないんだろう。つくづく自分が嫌になるよ。
現界に居たときの悩みなんて、あまりにもちっぽけで馬鹿らしすぎた……。
今度はその現界に戻る為に、今、こんな大変なことになってしまっているなんて……。
建物の周りを、奴らに気づかれないように静かに探ってゆく。
少しでも気(生体エネルギー)を捕らえなくてはならない。
(生きていろよ。あんたがいないとオレは……)
オレは、必死に願っていた。
暫くして……気が感じられる場所に当たった。なんだか、洞穴らしき場所だ。
オレは、躊躇することなく入っていった。時間が無いのだ。
奥には……木で出来た重層そうな門があり、槍を持った男が両サイドに立っていた。
「だれだっ!? 」
男たちは、大声で怒鳴ってきた。オレの姿に、一瞬戸惑ったようだったが……。
「ここに、処刑される男が居ると聞いてきたが……? 」
オレはなるべく、感情を抑えて、尋ねた。
「何だ!貴様っ!痛い目にあいたくなかったら…… 」
男が、慌ててこちらに向かってきた。オレは、構えた。
「やれるモンなら、やってみろよ、おっちゃん 」
槍で突こうとする男の懐へ……左手で攻撃を裁きながら、右拳を素早く深く……みぞおちへと叩き込んだ。
「がはあっ……!! 」
殺すのではないにしろ、彼らの動きを止めなければならない。
一撃必勝。これは、嫌というほどここでやらされた事だ。
一人を仕留めたすぐに、右からもう一人が襲ってきた。
思いっきり上段から槍を振り下ろし打ってきた。オレは右腕を頭の上へ
……攻撃を止めた。プロテクターもなしに現界ではありえない、防御だ。
「お前はっ!? 」
オレは答えることもなく、すぐに男の腹に思いっきり膝蹴りを喰らわせた。
終わった。
二人とも、うまく仕留めることができた。
門の入り口には大きな錠前がかかっていた。オレはちょいと念を入れて、鍵ごと壊してしまった。
(へぇ……この能力って、結構便利じゃん )
戸を開けると、そこには……手足を重い鎖でつながれ、貼り付けられている男が居た。例の腹の立つ男だ。
やっぱり此処が、牢屋なのか……。
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