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13

「……バール様は、悪い方ではありませんよ 」
老人は、僕の思うことを、見透かしているようだった。

「知っているのですか? 」
「言ったでしょう。この辺は、人の住むところではありません 」

静かな、低い声。不思議に落ち着く響きだ。

「オレ……もう……何を信じていいのか…… 」

「時が……解決してくれると思います。私が言えるのは、『自分を大切にしてください』……と、このぐらいでしょうか 」

「…… 」

「大丈夫。無理やり囚われるより、自らお戻りになられたほうがよろしいかと 」

せっかく、外に出てきたというのに……。
しかし、老人の言うことも、まんざら嘘ではないように思える。

「……もう少し……話を聞かせてください 」

オレは、これからのことを決めかねていた。

相手を理解したいと思ったら、まず話をすることだと分かっている。
でも、あのバールとか言う男は、必要最低限の事しか話してくれることは無かった。
この老人なら、それが許せるような気がしたんだ。

オレたちは、取り留めの無い話を、続けた。

……オレは出来る限りの知っている言葉を使って、老人は出来るだけ噛み砕いた易しい言葉で……。

若い頃は、老人は各地を転々と旅をしていたこと。
趣味は読書。地下室に大量にある蔵書の数がそれを物語っている。

オレは学生で、事故に遭うまでは、全く違う生活をしていたことを。
老人は……しかし表情を変えることなく黙って聞いてくれた。

この世界の他人が聞いたら、作り話だと怒りそうな……陳腐な僕の話を。

お陰で、やっと決心が付いた。
「……ありがとうございました。やはり……今は戻ったほうがよさそうですね 」

老人は、軽く頷いた。

「ジョイ、ヒコを……この方を途中まで、送って差し上げなさい 」

 「うん、じっちゃん、わかったよ」

 少年は、うれしそうに僕にまとわりついてきた。

 「いってくる 」

 

 

 二人で並んで歩く森。道らしき道も無い。
 本当に、どこまでも、果てしなく続いていそうだ……。

 「兄ちゃんはあの場所に住んでいたんだよね。凄いや 」
 オレは、苦笑した。住みたくて住んでいるんじゃネェのにさ……。
 「あそこはね、指導者と呼ばれる偉い人が祭られている場所なんだよ 」
 「……指導者? 」
 「うん、僕たちの地区には担当がなくて、あちらこちらから仮に来てもらっているらしいけれど。本来は、地区ごとにちゃんと住んでいるみたい 」
 「……? 」
 さっぱり意味が分からない。なんなんだ?それって……。
 「その……指導者って……何やってんだ? 」
 「僕にも、はっきり分からないよ。会ったこと無いんだもん。なんでもさ、色々な権限を持つことの出来る人らしいけれど…… 」
 「ふーん 」
 よく分かったような、分からないような……。

 その指導者のいるべき場所に、オレは連れてこられた訳で……。

 ……。

 まさか……だよな?

 やがて、建物らしき物が見えてきた。
 「ありがとう、もうここでいいよ 」
 「……又、来てくれる? 」
 あどけない笑顔。彼の笑顔はオレにとっては、救いだった。
 「うん 」

 オレはこうして再びあの場所をを目指した……。

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