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16

「今回の議題は、指導者を騙る輩の排除及び、処刑についてということで始めさせていただきます 」

いかめしい顔のおっさんたちやおばちゃんたちが数十名だろうか、部屋にいっせいに集まっている。

オレは、バールの側に座らされて、ことの成り行きを窺う破目になっていた。若そうな奴なんぞ誰もいない場所だった。

気のせいか……周りの大人たちの視線がやけに痛かった。

「バール君、今回は5人かね 」
一人の男が質問を始めた。
「ええ、元はといえば、この地区に常駐される指導者がいらっしゃらなかったのが原因なのですがね 」
「……では、単刀直入に聞くが 」
男は一呼吸間を置いた。
「その者が、我々の新しい指導者になるというのか? 」

視線がオレに集中する。
オレは……ますます萎縮していった。周りと目を合わせるのが怖いほどだった。大体こんな場に連れて来られるのが間違いなんだが……。
「はい 」
バールは、はっきりと強い口調で返事をした。

「……だが、見た所、我々となんら変わりが無いではないか? 」
「……この方は、事情あって、現界で暮らされていた 」
「現界だと?」
一同にどよめきがおこった。しかし、一番動揺していたのは、オレかもしれない。
「……あのさ……バール…… 」
奴は、慌ててオレの言葉を冷たく突き放すように遮った。
「貴方が話す必要はありません……まだその権限を許されてはいない 」
そして、改めて男の方を向いた。
「この方こそ、長年探し続けた『ベオウルフ』様なのです 」
「……して、その根拠は?証拠はあるのかね? 」
「なんなら、その偽者たち5人とともに『神の水』を浴びていただきましょうか? 」
自信たっぷりに、バールは言い放った。
オレは、軽いパニックを起こしていた。
『現界』……『ベオウルフ』……『神の水』……キーワードのような、その聞きなれぬ言葉に、恐怖を感じずにはいられなかったのだった。

……夢なら覚めてくれ……。
もう何度願ったことだろう。
自分自身が、何かとてつもないことに巻き込まれているらしい。
……それも、自分でどうすることも出来ずにいる。オレは無力だ。

朝が来る度に、目覚める度に……その落胆は大きい。
今日も一日、誰かと殴り合い・蹴り合いの稽古に明け暮れるんだ……。
こんなことなら、クラブで先輩にヤキ入れられる方がまだましだったっけ。
今のように、殺気を感じながら、周りに常に気を使う必要も無かったしな。
オレは、ノロノロとベッドから立ち上がった。

会議のあった翌日の訓練から、目つきの鋭い、体格の良い輩が増員されたようだった。
それまでは、オレと同じ体格の若造ばかりだったというのに……。
知らない顔ぶれが、たくさん並んでいた。

オレの前に、オレよりも頭ひとつ分、でかい大男が立っていた。
「お手合わせ願おうか? 」
……以前のオレだったら、あわくって、ケツまいて、逃げ出しているに決まっている。
しかし、今なら……ある程度相手の手の内が読めるようにはなっていた。

間合いを徐々に詰めてゆく。一瞬で相手の動きを読まなければならない。
先に攻撃はせず、常に受け重視、攻撃を繰り出したあとのわずかの隙を狙って仕留める。

相手には、動きを読まれてはならない。指ひとつ、目線ひとつで勝負は決まる。
自然体から、オールマイティに攻撃を繰り出せるのが、オレの長所だ。

5人ほど、沈めたであろうか……猛者たちの顔色が変わり始めた。

前半の稽古が終わり、休憩時間になった。
……最近、よく話しかけてくる男がオレに近づいてきたのだが、例の大男が割り込むように間にはいってきて、男を追いやってしまった。
……まぁ、オレにはどうでもいいことだったが。

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