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「あんたの兄さんは、何処に囚われているんだ? 」
 オレは、尋ねた。
 「神殿の地下にあると聞く。俺は、行ったことはないが 」
 テシウスが答えた。……牢屋なんてあったのか。オレは知らなかった……。 
 「オレだって、あそこには居たが、牢屋なんて見たことねえよ 」
 「あんた……あそこに居たのか? 」
 「あんたの兄貴と同じようにな。……オレの場合、牢屋ではない部屋で、 鍵かけられて閉じ込められて……そこでいろいろ仕込まれていた。最悪だったぜ 」
 テシウスは変な顔をしている。
 「あんたは……神殿の奴らの……仲間じゃないのか? 」
 おいおい、一緒にすんなよ。あの胡散臭い奴らの仲間だって?
 「冗談じゃねえ。あそこには、オレの知り合いはいねえよ 」
 「……」
 テシウスはますます顔を歪ませた。

 「兄は……俺のためにお金が欲しかったのです。俺のスキルをあげる為に…… 」
 バードランドが、彼に暖かい飲み物を用意してくれた。
 「俺たちには親が居りません。今まで、ずっと二人きりで暮らしてきましたから 」
 彼は、バードランドに自分達のことを話し始めた。オレとジョイは、傍らで黙って様子を見ていた。
 「神殿には、選ばれた者たちが、それぞれ優遇されて暮らしていると聞きましたので、兄は迷わず、志願いたしましたが……残念ながら選抜されずに戻ってきていたのです 」
 「……で、なぜ、こんなことに? 」
 「神殿の内部に『指導者を騙る』者が入り込んだので、人知れず処分して欲しいと……神殿の選抜隊の上官だったと思います 」
……だから、オレは騙ってねーっうの。
 テシウスの話を聞きながら、オレはムカムカしていた。

 「彼を『神の水』に投げ込んだまではいいが……そのあと、彼を逃がした犯人として、兄は捕らえられてしまったのです。
 ……全ては、神殿の選抜隊が仕組んだことだった 」
 「……で、結局オレが奴らとグルになってあんたの兄貴を嵌めたってか? 」
 「…… 」
 「あいつらは、あいつらで、オレがあんたの兄と共謀していると思ったようだな。オレを逃がした……と 」
 「……実は、バール様が隠されていたとも知らずにね 」
バードランドも理解したようだった。
 「なんてこった 」
 オレは、開いた口がふさがらなかった。

「やれやれ、結局また振り出しに戻るのかよ。まいったぜ 」
 オレは、のろのろ立ち上がった。
 「あんたの兄貴を助け出さないと、オレはどうしても現界に戻れないんだろ?……なんだよー、せっかく出てきたのにさー 」
 バードランドは、オレがこうすると、分かっていたようだった。
 「覚悟されるのですね? 」
 「うん。一か八かの賭けだな。もし、これで出てこれなくなったときは、仕方ねえ……従うしかないか 」

 テシウスが心配そうにこちらを見ている。
 「あのーー随分、聞かされた話の方と違うようです。貴方は 」
 「人の噂って、当てにならないことが多いぜ。オレはどうやらあんたたちのいう『指導者』には向いてねえらしいがな 」
 「にぃちゃん……」
 ジョイも心配そうに、寄ってきた。
 「大丈夫。なんだかオレにもよくわかんねえけれど……あいつらには負ける気がしねえ 」
 根拠はないが、なぜかそう感じる。
 「テシウス……といったな 」
 「…… 」
 「いいか、男の約束だぞ。オレがあんたの兄貴を助けたときはーー次はオレを必ず現界に送ってくれ 」
 「ええ…… 」
 ヤツは……静かにうなづいたのだった。

オレは、どこまでついてないんだろう。つくづく自分が嫌になるよ。
 現界に居たときの悩みなんて、あまりにもちっぽけで馬鹿らしすぎた……。
 今度はその現界に戻る為に、今、こんな大変なことになってしまっているなんて……。

 建物の周りを、奴らに気づかれないように静かに探ってゆく。
 少しでも気(生体エネルギー)を捕らえなくてはならない。

 (生きていろよ。あんたがいないとオレは……)
 オレは、必死に願っていた。

 暫くして……気が感じられる場所に当たった。なんだか、洞穴らしき場所だ。
 オレは、躊躇することなく入っていった。時間が無いのだ。

 奥には……木で出来た重層そうな門があり、槍を持った男が両サイドに立っていた。
 「だれだっ!? 」
 男たちは、大声で怒鳴ってきた。オレの姿に、一瞬戸惑ったようだったが……。

 「ここに、処刑される男が居ると聞いてきたが……? 」
 オレはなるべく、感情を抑えて、尋ねた。
 「何だ!貴様っ!痛い目にあいたくなかったら…… 」
 男が、慌ててこちらに向かってきた。オレは、構えた。
 「やれるモンなら、やってみろよ、おっちゃん 」

 槍で突こうとする男の懐へ……左手で攻撃を裁きながら、右拳を素早く深く……みぞおちへと叩き込んだ。
 「がはあっ……!! 」
 殺すのではないにしろ、彼らの動きを止めなければならない。
 一撃必勝。これは、嫌というほどここでやらされた事だ。
 
 一人を仕留めたすぐに、右からもう一人が襲ってきた。
 思いっきり上段から槍を振り下ろし打ってきた。オレは右腕を頭の上へ
……攻撃を止めた。プロテクターもなしに現界ではありえない、防御だ。
 「お前はっ!? 」
 オレは答えることもなく、すぐに男の腹に思いっきり膝蹴りを喰らわせた。

 終わった。

 二人とも、うまく仕留めることができた。

 門の入り口には大きな錠前がかかっていた。オレはちょいと念を入れて、鍵ごと壊してしまった。
 (へぇ……この能力って、結構便利じゃん )

 戸を開けると、そこには……手足を重い鎖でつながれ、貼り付けられている男が居た。例の腹の立つ男だ。
 やっぱり此処が、牢屋なのか……。

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